~シナモンロールとサウナ、そして静けさの文化にふれる~
日々の喧騒から少し距離を置きたいとき、
旅に出たくなることがあります。
そんなとき、心にそっと寄り添ってくれる本があります。
それが、益田ミリさんの『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』。
この本は、静かな国フィンランドでの「ひとり旅」を通して、
日常の延長にある「豊かさ」を描いたエッセイ。
そして、私がこの本を強くおすすめしたい理由があります。
それは、私自身がおふろカフェで初めてフィンランド式サウナを体験し、
その文化の魅力に深く共感したからです。
■ 木の香りに癒される、フィンランド式サウナ
日本のサウナに馴染みがなかった私にとって、
フィンランド式サウナは驚きの連続でした。
サウナ室に入ると、まず感じたのは「木の香り」。
ヒノキや白樺などの香りがやさしく包み込み、まるで森の中にいるような心地よさ。
そして、「ロウリュ」と呼ばれる儀式。
熱された石に水をかけて蒸気を立ち上らせると、一気に空間があたたかくなります。
その瞬間、誰かが元気よく叫んだのが——
「Kiitos!」(フィンランド語で“ありがとう”)
なんて素敵な文化なんだろう、と思いました。
ただ黙って汗をかくだけでなく、
自然の恵みに感謝し、人とのつながりを感じながらととのう。
この体験が、『考えごとしたい旅』に描かれている空気感と、ぴたりと重なったのです。
■ 水風呂の驚きと解放感
さらに初めての水風呂体験も印象的でした。
フィンランドでは、
熱くなった身体をそのまま湖に飛び込んで冷やすことも珍しくありません。
その一連の流れには、自然と自分が一体になるような感覚がありました。
勇気を出して入ってみた水風呂は、
意外にも心地よく、身体が目覚めるような感覚。
一度味わうと、もうやみつきになる“ととのう”体験です。
■ 日本のサウナとフィンランドの違い
日本のサウナは「静寂を守る」が美徳とされる場面が多いですが、
フィンランド式では違います。
仲間と語り合ったり、感情を共有したりすることが自然と許されている文化。
“共にいる”時間を楽しむ場所でもあるのです。
この違いを知ったとき、
私はふとミリさんの本の中の「ひとりだけど孤独じゃない」旅の描写を思い出しました。
沈黙の中でも心が通い合い、言葉の代わりに、空気や気配で“わかり合える”。
そんな豊かさがフィンランド文化にはあるのです。
■ シナモンロールとフィンランドの「丁寧な暮らし」
本の中で描かれるカフェのシーンもまた、忘れがたい印象を残します。
シナモンロールの甘い香りとコーヒーの湯気。
フィンランドでは、
日常の「コーヒータイム=カハヴィ」がとても大切にされています。
また、ArabiaやIittalaなどのフィンランド食器も、
暮らしの中に「美しさと機能性」の両方を感じさせてくれます。
それらは決して派手ではなく、毎日の生活を丁寧に楽しむ心を教えてくれます。
■ 光の祝祭、ユハンヌス(夏至祭)
フィンランドを旅するなら、
6月の**夏至祭「ユハンヌス(Juhannus)」**も見逃せません。
太陽が沈まない「白夜」の中、
湖畔で焚き火を囲み、人々が踊り歌う光の祝祭。
自然への感謝、太陽のエネルギー、そして生命のリズムに身をゆだねる時間。
この体験は、まるで魂の奥にある「自然の記憶」が目覚めるような感覚をもたらします。
■ まとめ:フィンランドは、自分を取り戻す場所
『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』は、
外の世界を旅しながら、内なる自分を見つめ直す旅でもあります。
私がこの本をおすすめしたいのは、
自分自身もまたフィンランド式サウナを通して「考える時間」に出会えたから。
何も急がなくていい。
何かを成し遂げなくてもいい。
ただ、そこにある空気を吸い、
木の香りに癒され、人とつながる時間がある。
そんな体験が、私にとってこの本の世界と、
フィンランドという国の魅力をより深く感じさせてくれました。
☕ あなたも、自分の「考えごとしたい旅」をはじめてみませんか?
最初の一歩は、本を読むことかもしれません。
もしくは、おふろカフェで木の香りに包まれるサウナ体験でも。
シナモンロールと“「Kiitos!」(フィンランド語で“ありがとう”)”の言葉を忘れずに。
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