日本の梅雨―
―それは、湿気と温度差に満ちた
心身ともに調子を崩しやすい季節。
アーユルヴェーダではこの時期
ヴァータ・ピッタ・カパ
すべてのドーシャが悪化しやすい季節とされ
体内の毒素(アーマ)が溜まりやすいと考えられています。
しかし同時に、
梅雨はデトックス(浄化)に適した季節でもあり
インドではこの時期に
「パンチャカルマ(五つの浄化法)」
を受ける人も多いのです。
では、この時期を健やかに過ごすには
どのような知恵があるのでしょうか?
アーユルヴェーダの視点から、
食・香り・生活習慣をご紹介します。
1. 梅雨に乱れやすいドーシャとその特徴
日本の梅雨は、気温や湿度の変化が大きく、
体が冷えたり重く感じたり、
気分が落ち込んだり、
関節痛や消化不良が起きやすくなります。
これは、三つのドーシャ
すべてに悪影響を及ぼす季節だからです。
- カパ(重く冷たい性質)が湿気で増え
むくみ・だるさ・気分の低下につながります。 - ヴァータ(乾燥と冷性)が不安定な天候や
冷えで悪化し、冷え・便秘・不眠・神経過敏に。 - ピッタ(熱と鋭さ)は、アグニ(消化の火)の乱れ
によって胃腸の不調、イライラ、皮膚トラブルに。
2. グナ(性質)を使ってバランスをとる
アーユルヴェーダでは、
ドーシャが複雑に乱れている時には
グナ(性質)を整えることがカギとなります。
▶ グナとは?
「グナ」とは、すべての存在に備わる性質のこと。
たとえば、「重い」「軽い」「冷たい」「温かい」
「湿っている」「乾いている」といった
20の質があり、乱れている性質と
反対のグナを取り入れることでバランスが整います。
▶ 梅雨のグナとおすすめ対策
梅雨の性質 | 取り入れるべき対策 | 例 |
---|---|---|
冷たい(Shita) | 温かさ(Ushna) | 白湯、しょうが、温かいお風呂 |
湿った(Snigdha) | 乾いたもの(Ruksha) | 除湿、お香、ハーブ |
重い(Guru) | 軽さ(Laghu) | 軽い運動、シンプルな食事 |
3. 梅雨におすすめの食事:旬と消化力を大切に
▶ 旬の食材を取り入れる意味
アーユルヴェーダでは
「その土地の旬のものを食べることは、
五大元素との調和」と考えます。
自然界のリズムに身を委ねることで、
からだと心も自然と整っていくのです。
▶ 梅雨時期の旬の食材(例)
- 野菜:しそ、みょうが、青じそ、空芯菜
ズッキーニ、モロヘイヤ、かぼちゃ - 果物:すもも、あんず、びわ、梅
- 薬味・香味:しょうが、にんにく、ねぎ、青じそ、ドクダミ
▶ 梅雨におすすめの調理と味付け
この時期はアグニ(消化の火)が弱くなるため
刺激が強すぎないやさしい味付けがおすすめです。
また、冷たいものや生野菜サラダ、
乳製品の過剰摂取はアグニを弱め、カパを増やす
ので控えましょう。
✅ 取り入れたい食材とスパイス
- しょうが:消化促進・体を温める・アグニを守る
- 黒こしょう:抗菌・アグニを刺激
- トゥルシー(ホーリーバジル):抗ウイルス・免疫アップ
- わさび・しそ・ミント:消化力アップ、気分をリフレッシュ
- クローブ・ひのき・ドクダミ:抗菌、抗酸化、カパの沈静
▶ 穀類にも工夫を
アーユルヴェーダでは
「1年以上保存した穀類は消化にやさしい」とされ、
梅雨の時期には理想的。
さらに意外なおすすめが「ポップコーン」。
軽くて乾いた性質を持ち、
カパが重くなりがちな
この時期にぴったりのスナックです。
4. 梅雨の香りと空間の整え方
湿気で空気がよどみ、カビや菌が繁殖しやすい梅雨。
心身の不調に加え、
空間のエネルギーも停滞しやすくなります。
そこで取り入れたいのが、
香りによる浄化と気分転換。
▶ おすすめの香り・お香
- ビャクダン(サンダルウッド):心を落ち着かせ、空間を浄化
- ショウブの根:古来からの清浄・邪気払い
- ベチパー・モッコウ・インド乳香(フランキンセンス):呼吸を深め、精神を整える
香りはアーユルヴェーダでいう「心の食事」。
また、太陽でしっかりと乾かした衣類を身につけることも、
心身に「光と乾きをもたらす」実践的なケアのひとつです。
5. ディーナチャリヤーで生活にリズムを取り戻す
「ディーナチャリヤー(dinacharya)」とは、
アーユルヴェーダの
一日の理想的な過ごし方を指します。
不安定になりやすい梅雨の時期だからこそ、
毎日の習慣が心と体を整える土台になります。
▶ 梅雨におすすめのディーナチャリヤー
- 朝起きたら白湯を飲む
- 舌みがきとオイルうがい(カファ対策に◎)
- やさしいストレッチや太陽礼拝(スーリヤナマスカーラ)
- 消化力を高めるランチを中心に、夜は軽めに
- 湿気対策にお香や換気、除湿器なども活用
まとめ:梅雨は浄化と整えのチャンス
梅雨はただの「ジメジメした不快な時期」ではなく
体と心を見直し整える絶好のタイミングです。
自然界のリズムに調和し
食と香りと習慣にアーユルヴェーダの智慧を
取り入れることで
どんな季節も味方にすることができます。
湿気に心が沈みがちなこの時期だからこそ、
軽く・温かく・乾いた質感を
暮らしの中に少しずつ増やして
心地よい季節の移ろいを味わってみてください。