現代人にとって避けられない「ストレス」。
仕事、家庭、人間関係、情報過多……
なぜ私たちは、これほど
簡単にストレスを感じてしまうのでしょうか?
その答えは、
「ストレスは外からやってくるもの」
という前提を一度疑うことから始まります。
実は、ストレスは“内なる自己”から
遠ざかるときに生まれるもの。
古代インドのヨガ哲学では、
人間の存在は「コーシャ(鞘)」という
層構造でできているとされており、
それぞれの層にズレや滞りが生じることで、
私たちは不調や苦しさを感じるようになるのです。
ここでは、最も内側からアンナマヤ・コーシャ(肉体)を起点に、外側へ向かって層が広がるという視点で、ストレスの構造とその癒しの方法を見つめていきます。
① アンナマヤ・コーシャ(肉体の鞘)──【病気・疲労】
最も内側にあるのは“肉体”の層です。
これは、「自分」という意識が
まず感じる一番身近な領域だからです。
身体が疲れているとき、痛みを感じているとき、
私たちは自分の内側にストレスの
サインを強く受け取ります。
病気や不調は、魂からの
“止まりなさい”というサインでもあります。
▶対処法:
・白湯を飲んで内側を温める
・栄養を整える食事、良質な睡眠
・アビヤンガ(オイルマッサージ)や軽い運動
② プラーナマヤ・コーシャ(エネルギーの鞘)──【問題への解決策が分からない】
次にあるのが
「プラーナ(生命エネルギー)」の層。
エネルギーが不足すると、集中力が続かなかったり、
何をどうすればいいか分からない感覚に陥ります。
ストレスを感じていても、
解決策が浮かばないときは、
この層に滞りがあるサインです。
▶対処法:
・深い呼吸(プラーナヤーマ)を意識する
・自然の中で過ごす
・朝日を浴びる、グラウンディングを行う
③ マノーマヤ・コーシャ(心の鞘)──【心の傷】
感情や思考、記憶をつかさどる層。
人間関係のトラブルや、
過去の出来事に対する記憶、思い込み──
心の中にある「傷」はこの層にたまっていきます。
▶対処法:
・瞑想やマインドフルネスで感情を観察する
・日記や感情ワークで感情を言語化する
・インナーチャイルドの癒し
④ カルママヤ・コーシャ(行為の鞘)──【悪いカルマ】
「なぜか同じことばかり繰り返してしまう」
それは、この層にある
“カルマの記憶”が関係しています。
過去の行為が未来を形づくる─
─それがカルマの法則。
無意識に繰り返される思考や行動パターンは、
この層から来ている可能性があります。
▶対処法:
・日常に小さな善行を増やす
・感謝の習慣を持つ
・反応ではなく、選択で生きる
⑤ ヴィグニャーナマヤ・コーシャ(智慧の鞘)──【宇宙や見えないものを信じられない】
私たちは、本来「直観」や「内なる導き」
を感じる力を持っています。
しかしこの層が曇ると、
物事をただの物理的現象としてしか捉えられず、
宇宙やエネルギーの存在、
見えないサポートを信じられなくなってしまいます。
▶対処法:
・自然に触れることで“見えないつながり”を思い出す
・哲学や神話に触れて世界観を広げる
・静かな時間を持ち、自分の中の“声”を聴く
⑥ アーナンダマヤ・コーシャ(至福の鞘)──【喜びが感じられない】
最も外側にある層。
ここは「本質の自分=純粋な存在そのもの」
とつながる場所です。
この層とつながっているとき、
私たちは条件なしに
「喜び」や「安心」を感じることができます。
ストレスに満たされた状態では、
この感覚から遠ざかってしまい、
「何をしても満たされない」「心から笑えない」
と感じるようになります。
▶対処法:
・無条件の愛を思い出す
・深い瞑想、祈り、ワンネスの体験
・魂の喜びに沿った時間を過ごす
ストレスとは、“魂からのずれ”
こうして見てくると、
ストレスとは単なる環境要因ではなく、
私たちが“本来の自分”から
ずれてしまったときに起きるサインであると分かります。
どの層にゆがみがあるのかを
丁寧に見つめることで、
ストレスに支配されるのではなく、
根本から整えていくことができるのです。
おわりに──わたしの中心に還る旅
ストレスと戦うのではなく、
そっと内側に目を向け、やさしく癒していくこと。
それは、魂の声に耳を澄ましながら、
“ほんとうのわたし”へと
還っていく旅なのかもしれません。