1年が半分終わる6月30日。
多くの神社でひっそりと、
しかし深い意味を持って行われる神事が
あるのをご存知でしょうか?
それが「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」。
草で編んだ大きな輪をくぐり、
半年間にたまった“けがれ”や“疲れ”を祓い
心身をリセットする古来からの神道儀式です。
実はこの風習、日本だけでなく
世界各地に“草の輪”を使った
祓いや再生の儀式が存在します。
そして、その背後には、
陰陽師や古代のスピリチュアルな
叡智が隠されています。
今回は、6月30日の茅の輪くぐりを通じて
「人と自然」「日本と世界」の
共通する祈りの形に出会ってみましょう。
✨茅の輪くぐりとは?──半年の“けがれ”を祓う神聖なリセット
茅の輪くぐりは、
主に6月30日と12月31日に
全国の神社で行われる
「大祓(おおはらえ)」という行事の一環です。
中でも6月のものは
「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼ばれ、
暑さや疫病の季節を迎える前に、
心身の浄化と健康を祈る
節目の儀式として親しまれてきました。
境内には、茅(ちがや)という草を
編んで作られた大きな輪が設置され
参拝者は以下のような所作で輪をくぐります。
- 正面からくぐって左まわり
- 2回目は右まわり
- 3回目は再び左まわり
この“八の字”の動きは
「災いを断ち切る」
神聖な所作として伝えられています。
🌀その起源は?──蘇民将来伝説とスサノオ
茅の輪くぐりの起源は、
日本神話に伝わる
「蘇民将来(そみんしょうらい)伝説」
にさかのぼります。
ある日、旅の途中のスサノオノミコト(素戔嗚尊)が、
一夜の宿を乞います。
裕福な弟は断ったものの、
貧しい蘇民将来は心を込めてもてなしました。
数年後、再び現れたスサノオは
疫病をもたらしましたが、
蘇民の家族には「茅で作った輪」を
腰につけるよう告げて助けました。
この伝承に基づき、
茅の輪は「疫病除け」「災厄除け」
の象徴となったのです。
🧍♀️人形(ひとがた)と陰陽師の深い関係
茅の輪くぐりとともに行われるのが
「人形(ひとがた)祓い」
紙や藁でできた小さな人型に
自分の名前や年齢を書き
体をなでて息を吹きかけます。
これにより、けがれや病気、不運などを
形代(かたしろ)に移し、
神社に納めることで清めるのです。

この風習のルーツには、
平安時代の「陰陽師」たちの
祓いの技術があります。
彼らは、形代を用いて病や呪いを引き受ける
「身代わりの術」を行っていました。
人形とは、ただの紙ではなく、
霊的にけがれを引き受ける
神聖なメディアだったのです。
◇おすすめの本
呪術講座 入門編 加門 七海 (著)
🌏実は世界中にある「草の輪」の祓いと再生
「草の輪をくぐる」「植物の輪を頭にかぶる」
「草の輪を飾る」といった風習は
日本だけに限りません。
実は世界各地で共通して見られる
人類共通の祈りの形なのです。
ケルト文化の花冠・草の輪
- 夏至祭(ミッドサマー)では
草や花で作った輪(花冠)をかぶって踊ります。 - 花輪は自然霊とのつながりや、再生・豊穣の象徴。
スウェーデンの夏至祭(Midsommar)
- 花の柱や花の冠を作り、円を描いて踊る祭礼。
- 草の輪=太陽・命の循環を意味し
精霊に祝福されるとされます。
中国・端午節の薬草の輪
- 旧暦5月5日の「端午節」には
ヨモギや菖蒲を使った草の輪を玄関に飾る習慣があり
魔除けと健康祈願の意味があります。
ネイティブ・アメリカンの草の円
- 草や羽根、薬草で神聖なサークルを描き
祈りや浄化の儀式を行う。 - 円形は宇宙・霊界との通路であり
「秩序」「調和」の象徴。
🌿「輪」は、世界の祈りの形
「輪」とは、はじまりも終わりもない永遠の形。
それは、「命の循環」「自然との調和」「再生の象徴」として
時代や宗教を超えて用いられてきました。
草や花で編んだ輪を身に着けたり
くぐったり、飾ったりする行為には
命あるものと共鳴するスピリチュアルな意味があるのです。
🔔 6月30日、神社で「草の輪」をくぐってみませんか?
現代の私たちにとっても、日々のストレスや不安、
身体の疲れや心のざわめきは
「目に見えないけがれ」といえるかもしれません。
1年の半分という節目に
「けがれを祓い、新しい自分へと生まれ変わる」
ための小さな儀式として──
6月30日、ぜひ神社へ足を運んでみてください。
草の輪をくぐるという行為が
ただの伝統ではなく
「内なる浄化のきっかけ」となってくれるはずです。